どこで読んだっていいじゃなか

• kitworks
• 04:38 PM
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• カテゴリー:駄文

　前回の書き込みに対するアンチテーゼを示すような内容ですが、読書の善し悪しというのは、必ずしもどれだけリラックスし、本に集中していたか、ということだけに依るものではないと思います。また、集中の程度と内容の頭に残る程度、というのも必ずしも比例するものではありません。

　自分のことに話を限れば、本の内容とその本を読んだ状況を印象的に思い出せるパターンの多くは、家で読んだものとは限らないようです。通学途中の電車内だったり、実験中の待ち時間の合間だったり、あるいは山や無人島でのテントの中だったり。リラックスの程度の評価からすれば、いずれも高いポイントというわけではないはずなのですが、それにも関わらず「そう言えばあの時に読んだ本は面白かったなぁ」という具合に鮮明に思い出せるものが多くあります。そういうシチュエーションの中においても、やはり旅行中に読んだ本の記憶というのは、ぼくにとって少し特別なものです。大学時代にワンダーフォーゲル部に所属していたということもあって、山に限らず旅行はよくしたものですが、いつどこで何を読んだかを、驚くほど鮮明に思い出すことができます。人によっては、そんなのは当たり前のことじゃなか、と思われるかもしれませんが、残念ながらぼくの乏しい記憶力に依っていては、ほとんど不可能なはずのことです。

　旅行中の読書が印象的な理由について少し考えてみると、すぐに２つほどが思い浮かびます。一つは、旅行そのものが印象的なイベントだということです。旅行中に読んだ本だから印象的だというより、印象的な旅行中に読んだ本だから、しっかりと記憶されているということですね。まぁこれは当然のことで、誰だって一週間前の一日を思い出すよりも、若い頃の楽しい旅行中の一日を思い出す方がずっと簡単なはずですから。二つ目の理由は、旅行の時に持って行く本は、毎回かなり厳選したものだということです。旅行中というのは、多少精神的に高揚しているものだし、旅行先や旅行の目的によっても、その時々の気分は微妙に変化するものです。多くの人にとってもそうであると想像するように、ぼくも旅行の前日は旅行のことを考えながら、どの本を鞄に詰めようかと、積み上げられた本の背を見ながら悩むのが大好きです。確実に楽しむことができるものを一冊、あとは当たり外れはともかく期待の大きなものを、ぼくは選ぶことにしています。そうしたことを考えてみれば、旅行中に読んだ本が印象的なのは、必然だと言えるかも知れません。

　印象的な読書の記憶は、ぼくにとっては何よりの財産です。今後も安楽椅子を探し続けるのと同じく、ゆっくりとした旅行と読書というのを楽しんでいきたいものです。